vol.2 YNKsでレトロ探し

2024.03.28

雑誌編集者ユニット・お砂糖ひとさじの2人が、iPhone片手に八重洲・日本橋・京橋エリアへ。メジャーどころから意外な場所まで、まち歩きを楽しくする新たな視点が盛りだくさん。

第2回は「YNKsでレトロ探し」。老舗喫茶店、老舗食品スーパー、そして日本映画の歴史に触れられる場所。この街の中にひそむちょっぴり「レトロ」なスポットを歩き回りました。

昭和の香りがする喫茶店で、パフェを。

八重洲、日本橋、京橋…。江戸時代からの歴史が詰まったこのエリアは、歩いているといろんな時間軸のものと出合える場所だ。文明開化から昭和の半ばまでは、欧米由来の最新のハイカラなカルチャーにあふれた場所でもあったのだろう。

今も街の中には、そんな時代のちょっと「レトロ」なものがいっぱいあって、まだ生まれていなかった時代のはずなのになぜか懐かしいような、不思議な気持ちにさせてくれる。

1966年から営業している老舗喫茶店「COFFEE LOTUS」もそんなお店だ。ある雨の日の夕方、マスターが温かく迎えてくれた。店内はミッドセンチュリーなインテリアで、センスを感じるたくさんのお花が飾られている。

トースト、サンドイッチ、デザート、ドリンク…。それぞれのメニューがとにかくいっぱい。おすすめはどれですか?と尋ねたら、マスターは「どれもおすすめだよ!」。というわけで、お目当てにしていたフレッシュフルーツパフェとフルーツサンド、そしてネルフィルタードリップで丁寧に淹れるコーヒーを頼んでみた。

フルーツが山盛りのパフェは、レトロ喫茶店のパフェらしい写真映え。店名通りのロータスビスコフが可愛いアクセントになっている。ボリュームたっぷりなのに、ペロッと食べてしまった。

フルーツサンドは2人でシェアできるくらいのたっぷりさなのに、甘さ控えめのクリームであっという間にこちらも完食!

というわけで、幸せな夕方の時間をLOTUSで過ごしたのだけど、店内にはスイーツやコーヒーを楽しむお客さんたちが入れ替わり立ち替わりやってきた。みんな、マスターに会いに、そして心地いいひとときを過ごしに来ているのだろう。今度はモーニングの時間にも行ってみたい。

  • ミッドセンチュリーの雰囲気を感じる、ウッドの壁。大きな窓も気持ちよくて居心地がいい。

  • フレッシュフルーツパフェにはこんな大きなカットメロンが。とにかくフルーツの量がすごい!

  • フルーツサンドには、フルーツ盛り合わせもセットに。なんとも贅沢。

  • COFFEE LOTUS

    住所:東京都中央区日本橋3-7-9

    営業時間:平日7:00~14:00、15:00~18:00 第2・4土曜日12:00~17:00

    定休日:土日祝

昭和8年から京橋にそびえるエレガントなビル。

京橋2丁目を歩いているとひと際目立つ荘厳な建物がある。ルネサンス様式のそのビルは、明治屋京橋ビルだ。その1階に明治屋京橋ストアーがある。

 

このビルは昭和8年に建築されたという。東京大空襲をも生き残ったビルは、今日も優美な姿で京橋の歴史を感じさせてくれる。

 

そもそも明治屋は、名前の通り明治時代に船舶納入業として創業した。創業者の磯野計氏は、イギリス留学で身につけた欧米の一流の食文化を日本に広めようと輸入食品・酒類の国内販売もスタート。当時の日本にハイカラな洋食文化を紹介した第一人者だ。

 

洋食が当たり前になった今であっても、明治屋 京橋ストアーは特別な場所。エレガントなビルに入るだけでワクワクするし、そこに並ぶ世界各地の珍しい食材や調味料、缶詰、お菓子やお酒は、気になるものばかり。

 

店内には、創業以来の歴史を感じさせるモノクロ写真や昔のお酒の宣伝ポスターなども展示されている。かつての日本の食文化に思いをはせながら店内を歩いていたら、なんと明治時代当時の味を復刻したジャムを発見した! 明治屋のオリジナルブランド「MYジャム」のイチゴジャムで、英字が印刷された当時のパッケージが可愛い。糖度の高いものが好まれた時代で、今のMYジャムよりも甘味が強めなのだそう。

 

おしゃれなパッケージに歴史が詰まったジャムは、誰かへのギフトにも喜ばれそうだ。明治屋の高級食材は創業当時から今でも変わらず憧れの存在で、食卓をちょっと贅沢に彩りたいとき、気の利いたギフトをあげたいとき、京橋のこのビルに来れば間違いない。

  • 明治44年発売の「MYジャム」が復刻! 缶を紙で包装したパッケージは今見てもおしゃれ。

  • かつてキリンビールの総販売代理店だった明治屋。かつてのビールの宣伝カー兼販売カーの写真も店内に。

  • 明治屋と言えば、コンビーフをはじめとしたおしゃれな缶詰が有名。バラエティ豊かなラインナップ。

  • ビルのサイドから。レリーフもライトもドアも、細部まで美しい。

  • 京橋駅の明治屋口。地下鉄の駅から直結の建物としては、現存最古なのだとか。

  • 明治屋京橋ストアー

    住所:東京都中央区京橋2-2-8

    営業時間:平日10:00~20:00 土・日・祝日10:00~19:00

京橋でレトロ映画の世界にタイムスリップ。

鍛冶橋通りを歩いていると、正三角形の窓が印象的なビルに出合った。ここは「国立映画アーカイブ」の建物。かつてこの場所には日活の本社があり、さらに遡ると明治時代は第一福宝館という映画館があったという。

 

日活、大映、東映……。昔は日本のメジャー映画会社のほどんどが京橋に集まっていたそう。今まで全然知らなかったけれど、京橋は映画の町だったのだ。

 

「国立映画アーカイブ」は、主に映画のフィルムや関連資料を集め、保存し、復元を行なっている機関。それだけでなく、スクリーンを備えたホールでは特集上映や教育普及企画などを開催していたり、テーマに合わせて映画関連資料を用いた展示をしている。

 

今回私たちは7階にある展示室を訪れた。この展示室では常設展と企画展が開催されていて、常設展では「日本映画の歴史」を鑑賞することができる。(なんと常設展・企画展合わせて観覧料は一般250円!)

 

歌舞伎を録画した日本映画誕生初期のものから始まり、サイレント映画、トーキー映画、そして戦争に突入し……。舞台がメジャーだった時代から映画が人々のエンターテイメントの中心になっていく様は、テレビからYouTubeやストリーミングサービスに人気が移りつつある現代と似ているなと感じた。そして復元された貴重なフィルムや当時のポスターと共に日本映画の歴史を辿っていくうちに、だんたんとタイムスリップしたような感覚に。

 

デザインが斬新な手描きポスターや今見ても迫力のあるフィルム映画作品の数々。そこにはアナログな時代ならではの人の手による丁寧さがあり、インスタントで何でも作れてしまう今の時代に何かを訴えかけているようでもあった。

 

膨大な資料はとてもじゃないけれど一度では見きれないので、何度も繰り返し訪れたいと思う。

 

このエリアにまたひとつ、お気に入りの場所が増えた。

  • 時代ごとの映画撮影用カメラの展示も。常設展はすべて写真撮影可能とのこと。

  • 銀座一丁目に1955年から1981年まで開館していたテアトル東京のシネラマ看板。今見てもポップで可愛い!(※特別出品コーナーのため、12月に展示変えとなります)

  • 小津安二郎監督の『東京物語』のポスターも発見!

  • 国立映画アーカイブ

    住所:東京都中央区京橋3-7-6

    営業時間:11:00~18:30

    定休日:月曜

お砂糖ひとさじ
雑誌編集者ユニット

千田あすかと堂坂由香のエディター2人による雑誌編集者ユニット。「かつて女の子だったすべての女性にお砂糖ひとさじを」をテーマに、Instagram: @osatouhitosaji での発信、自分たちのいまの気分を詰め込んだ小さなマガジンの発行などの活動中。