八重洲・日本橋・京橋エリアには、衣食住や趣味・仕事まで本物を知るおとながたくさん。イラストレーターの佐々木千絵が、このまちの”粋”を体験するイラストエッセイ。
第2回は茶道具専門店「宇野商店 東京店」で開催されたお茶会に参加。茶人・千利休が解いた茶道の精神「和敬清寂」がなんたるかを体感してきました。
日本に生まれて約半世紀、薄々感じていた己の伝統和文化への造詣の浅さ。
創業100年以上、京都祇園に店舗を構える樂茶碗・古美術専門「宇野商店 東京店」のお茶教室がこの京橋エリアにあるというので、これは「粋なおとなの嗜み」が学べる!と伺いました。
茶道では掛け軸やお茶碗を誉めるというのはなんとなく知っていましたが、粋に誉めるには知識と知性がこんなにも必要だったとは…!
おこいちゃの後におうす?
この日、自分が知ってるお抹茶はおうす(薄茶)というカジュアルな茶会のお茶ということを知る。
対しておこいちゃ(濃茶)は茶葉も茶碗も格が違うらしい。
さらにお稽古としての茶道って、懐石料理から濃茶薄茶を数時間かけて楽しむ正式なお茶事(ちゃじ)の中の、お茶作法のみ切り取った点前の習い事なんですね。
え?みんな知ってたって!?
ああ、これが古さや質素さの中に本質的な美しさを見出す美意識、「侘び寂び」なのね!
日ごろ普通に過ごしてるだけでは触れることのない世界。
お菓子やお茶の味はもちろん、着ている着物、書や花やお湯を沸かしている音にまで素敵なところを見つけて誉める、誉める、誉める。
裏打ちされた知識や経験がないとこの私のように「おいしっ!」だけで終わってしまう悲しみ。
誉め方にこそ、その人のインテリジェンスが表れるということか…。
気遣いできちんとした格好をしてきた編集Sさんは高価なお茶碗などを傷つけないためアクセサリーを外し(私はたまたま朝急いでつけ忘れてただけだけど、知ってましたという顔をする。)
さらに気を遣って末席に座ったものの、実は回ってきたお道具を正しく亭主に戻さないといけないとても重要な「お詰め」という大役だったのです。
仕事ができる気遣い屋さんのSさん、この日の気遣いはことごとく裏目に…。
そう、茶道の世界は現代の常識という武器だけでは到底太刀打ちできない深い世界。
茶道の精神「和敬清寂(わけいせいじゃく)」この全てにお茶の心がこめられているとのこと。
和 お互いに仲良く
敬 お互いを敬いあう
清 清らかに
寂 動じない静かな心
「私たちも初めは何もわからなかったのよ!」と緊張を解くため優しく声をかけてくださったり〜和〜
全てイラストになる取材だというのに皆さま素敵なお着物で迎え入れてくれたり〜敬〜
しつらえや雰囲気全てが和やかで清らかで〜清寂〜
(私なりの解釈)
和敬清寂の心はまさにお互い敬意を持って接する、平和な日常に必要なおもてなしの心。
人付き合いや仕事など全てに通じる精神ですね。
うん、先生やお弟子さんたち皆さんのおかげでなんか少し分かった気がする!(ほんとか)
今回体験取材しただけで容量いっぱいになったお茶知識、このレベルを少しでも上げていくことが
和の心を知るおとなの嗜みだと実感しました。
今回は取材ということで皆さん素敵なお着物で参加してくださいましたが、普段は洋服で、
お稽古も和気藹々とした雰囲気だそうです。
「同じ席に入ればひとつの家族のようなもの」(公文さん)
もしご興味を持った方がいたら、気軽に見学に行ってみてください!
独特のゆるいタッチと鋭い視点で描くイラストエッセイが人気。雑誌や広告、ウェブメディアなどで幅広く活躍中。大の旅好きで台湾のオールイラストガイドブック『LOVE台南~台湾の京都で食べ遊び~』(祥伝社)を2017年に出版。『子連れソウル』『ジジ連れ冥土のみやげ旅inパリ』(ともに祥伝社)などの著書がある。
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