EVENT REPORT

初心者にもわかる楽しみ方を紹介。山王祭について学ぶ「江戸まち塾」第一回開催

2024.04.27

今年6月に、コロナ禍を経て6年ぶりの通常開催となる山王祭。江戸三大祭りにも数えられる山王祭について、その歴史と魅力や楽しみ方を初心者にもわかりやすく紹介する「江戸まち塾」の第一回が、3月21日に東京スクエアガーデンで行われました。

 

江戸三大祭りの一つ、山王祭とは

 

今回の講師を務めた堀口茉純さん(左)と鹿島彰さん(右)

 

山王祭(さんのうまつり)は、東京都千代田区にある日枝神社で開催されるお祭りです。江戸時代には江戸城内に御神輿が入城し、徳川三代将軍家光以降、歴代の将軍が上覧拝礼する由緒ある「天下祭り」として現在まで受け継がれてきました。この山王祭、神田祭に深川祭を加えたものが江戸三大祭り、そして山王祭、京都の祇園祭、大阪の天神祭をあわせて日本三大祭と呼ばれています。

 

山王祭は2年に1度、6月に行われるのが習わしとなっていて、今年はコロナ禍を経て実に6年ぶりの通常開催となります。

 

山王祭についての理解を深め、より楽しむためのプログラムである「江戸まち塾」。その第一回目となる今回は、タレント・女優・歴史作家として活躍中の堀口茉純さんと江戸町火消し「ろ組」組頭の鹿島彰さんが登壇し、前半は堀口さんのテーマトーク「祭礼初心者(ワーカー)にも良くわかる 山王祭と江戸っ子」、後半は「山王祭における町火消しの果たす役割」と題し、堀口さんと鹿島さんのトークセッションが行われました。

 

会場には、祭りの開催を待ち望んでいた地元のみなさんや山王祭ファン、今年初めて足を運んでみようという八重洲・日本橋・京橋等近隣エリアのワーカーまで、幅広い参加者が集まっていました。

 

会場後方に展示された江戸初期の山王祭の様子が描かれた絵巻のレプリカ

 

初心者でも楽しめる山王祭の魅力を紹介

 

堀口さんの「江戸まち塾」への登壇は7年ぶり2度目。会場には前回も参加したリピーターも

 

前半パートでは、堀口さんが古地図や浮世絵をはじめ江戸時代の資料をもとに、山王祭の歴史や当時の町の様子、人々の盛り上がりなどを解説。

 

「日枝神社のお祭りである山王祭は、徳川家と非常に深いつながりのあるお祭りです。当時、山王さまは城内鎮守の社、幕府直轄の神社として厚く保護されていました。明暦の大火以降、多くの寺社仏閣は江戸城の外堀の外へ移転となりましたが、その時も例外的に江戸城内に残ったのが日枝神社です。これは日枝神社が、徳川三代将軍家光公以降、将軍の産土神(うぶすながみ)であったこと、そして江戸城の南西、つまりお城の裏鬼門を守護する役割を担っていたからだと考えられています」(堀口さん)

 

江戸時代当時、山王祭の山車や出し物の順番などが書かれたプログラムのようなものが発行されていたそう

 

特に多くの参加者の関心を集めていた話題が、当時の山王祭に出ていた45基の山車の順番についてです。

 

「もともと山車の先頭は猿でしたが、二代秀忠公の命により鶏が一番になったそうです。この鶏の山車は太鼓の上に鶏が乗っているデザインなのですが、これは『諫鼓鶏(かんこどり)』といって、中国の故事に由来するもの。城の門の前に太鼓を置いて、王の政治が悪い時は太鼓を叩いて知らせよと民に命じたのですが、実際は王の政治が大変立派で叩く人がおらず、太鼓の上に鶏が止まる程だったということから、天下泰平の象徴とされていました。現在でも、山王祭はもちろん神田祭でもこの山車が最初に登場します。ぜひそんなところにも注目してご覧ください」(堀口さん)

 

「東都日枝大神祭礼練込図」にみる江戸時代の山王祭

 

このほかにも話題は盛りだくさんで、山車の合間に登場する附け祭り(出し物)と、附け祭りの中でも大人気だった象の話、さらに浮世絵師・歌川広重の『名所江戸百景』の「糀町一丁目山王祭ねり込」に描かれた山王祭の様子に残る2つの謎(順番の違い、諫鼓鶏の色)など、堀口さんの江戸への情熱、山王祭エピソードはとどまることを知りませんでした。

 

祭りを支え、住民と地元企業をつなぐ役割も果たす町火消し

 

後半には半纏を着た鹿島さんが登場

 

後半では、堀口さんと鹿島さんのトークセッションが行われました。現在の町火消しの役割や、受け継がれる伝統といった基礎知識からセッションをスタート。

 

江戸消防記念会の活動や祭りの際の町火消しの役割について話す鹿島さん

 

「江戸時代当時、町火消しが鳶を生業としていたように、江戸町火消しの流れを汲む『江戸消防記念会』にも鳶、建築業を仕事としている人が多くいます。江戸町火消しが担っていた、地域の消防(現在の消防団のような役割)や、祭りの際の御仮屋の設営や祭礼の護衛などは、今でも私たちの仕事ですし、『木遣り(きやり)』や『梯子乗り』など火消しの伝統を後世へとつなぐのも私たちの重要な役割のひとつです」(鹿島さん)

 

町火消しの活動の様子が分かる写真を見せながら初心者にもわかりやすく解説

 

堀口さんからは、実際の祭りの際の町火消しのみなさんの具体的な活動内容について質問が。

 

「まずはそれぞれの町会の『御神酒所(おみきしょ)』(神饌をお供えする場所)や『御仮屋(おかりや)』(御神輿を存置する場所)の製作から入ります。そして祭りのひと月前くらいに軒花提灯を打っていきます。この時が町のみなさんと顔をあわせて仕事できるよい機会になっています。最近ではオフィスビルに飾り付けさせていただく機会も増え、多くの企業やそこで働く人に協力いただいています」(鹿島さん)

 

また、「下町連合渡御」の際には町火消しによる木遣り唄が町神輿を先導すること、その後祭りのクライマックスともいえる日本橋での神輿の「差し上げ」など、山王祭の見どころが次々と紹介されました。

 

そして会の最後には、堀口さんと鹿島さんそれぞれが、6年ぶりに行われる山王祭への思いを語りました。

 

ますます今年の山王祭が楽しみになったと笑顔の堀口さん

 

「あらためてお祭りというのは町が一体になる、ほかにない機会なんだということを感じました。特にこのエリアはワーカーの方たちも多く、その方たちと町の方たちをつなぐ役割を頭たちが担っていらっしゃるということをお話を聞いて強く感じました。これは本当に素晴らしい文化ですね。私自身、本当にお祭りがますます楽しみになりました」(堀口さん)

 

たくさんの方に気軽に参加いただきたいと話す鹿島さん

 

「時代が変わって、御神輿を担ぐ人たちも変わってきています。町会の会員企業のみなさまにはすばらしい協力をいただいています。あわせてぜひ個人でも町会に参加していただき、転勤で勤め先が変わっても、定年で会社を卒業しても、2年に1度はお祭りのためにこの街に帰ってきていただけるとうれしいです。僕たちも頑張ってそんな街にしていきたいと思います」(鹿島さん)

 

山王祭の歴史とその楽しみ方、そして祭りを支える町火消しの役割について興味深い話が満載だった今回の「江戸まち塾」ですが、第二回が5月13日に開催予定です。残念ながら第一回を見逃したみなさん、ぜひ今からご予定おきください。

 

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【講師】
堀口茉純さん
タレント、女優、歴史作家。2008年に江戸文化歴史検定一級を最年少で取得し、「江戸に詳しすぎるタレント=お江戸ル」として注目を集める。イベント、講演活動に精力的に取り組むほか、江戸文化に関する著書も多数。
https://hoollii.com/

 

鹿島彰さん
日本橋生まれ。火消しの世界に子供の頃から関わり、ろ組の一員として19歳の時に梯子持ち、25歳の時に纏(まとい)持ちに。2016年に江戸消防記念会 第一区三番組組頭に就任。
http://www.edosyoubou.jp/index.html