EVENT REPORT

「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2024 Reception Party」 Photo Ville創設者ら海外ゲスト、アーティストが集まった一夜

2024.10.25

「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」(以下、「T3」)は、世界でもユニークな大都市のオフィス街を舞台にした屋外型国際写真祭です。東京駅の東側に位置する八重洲・日本橋・京橋を主な会場として2024年10月5日(土)~10月27日(日)まで開催されます。

 

T3は、多くのアーティストに国際的な作品発表と制作の場を提供したいという想いから誕生したフォトフェスティバル。八重洲、日本橋、京橋エリアにある12カ所以上の屋内施設や屋外のオープンスペースが舞台。6回目となる今年は、国内外から過去最多となる200名以上のアーティストが参加し、展示箇所も過去最大。美大や専門学校の学生たちも参加する写真展示や海外VIP 、MoMAキュレーター等を招いたトークショーなどの多彩なプログラムが、23日間にわたって展開されます。10月4日には今年のT3の開幕を記念したレセプションパーティが行われました。

 

■5組のキュレーターによる企画展で日本の写真史を振り返る

 

 

2024年は、1974年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で『New Japanese Photography』展が開催されてから50年の記念すべき年。この展覧会は日本国外で初めて行われた大規模な現代日本写真展で、海外における日本写真への評価や研究に大きな影響を与えた展覧会として知られているそう。この節目の年に、日本の写真史に改めて光を当て日本の写真を世界に発信していきたいというのが今年のT3のコンセプトであることが、T3のファウンダー速水惟広さんから語られました。

 

 

それに続き、今回参加したキュレーターや作家の方々を速水さんが紹介。会場のゲストからは惜しみない拍手と賛辞が送られました。

 

 

その後、会場ではゲストたちが、プロジェクターで壁に映し出された今回の展示作品を眺めたり、グラスを片手にアートや写真について語りあったり、賑やかな歓談の時間へ。

 

 

■年々規模が拡大するT3が日本だけでなくアジアの写真文化を盛り上げる

 

賑やかな交流が続く中、ファウンダーの速水さんに今回のT3に込めた思いをお聞きしました。

 

「T3は年々内容が充実し、規模も拡大しています。より良い写真展を目指して情熱を持って取り組むうちに、自然と規模が大きくなり、支援してくださる方々も増えてきたというのが実際のところです。日本国内だけでなく、海外からの参加希望者も増加していますが、より多くの方々にとって参加しやすい環境が整いつつあります。今年から写真展示に加えてフォトマーケットが導入されましたし、T3の期間中にメイン会場となるエリアで別のイベントを開催するという提案も寄せられています。T3を通じて、作家やアートワーカーたちの活動領域をさらに広げていきたいと思っています」(速水さん)

 

このレセプションには、ニューヨークで屋外型写真祭「フォトヴィル・フェスティバル」を主催する非営利団体Photoville(フォトビル)のクリエイティブディレクター&共同創設者のサム・バージィレイさんも来場。速水さんがT3を立ち上げるきっかけとなったのが「フォトヴィル・フェスティバル」だったのだそう。バージィレイさんに、T3をこのエリアで開催する意義についてお聞きしました。

 

 

「ニューヨークも東京も共に大都市です。特に、八重洲、日本橋、京橋エリアは、ビジネスパーソンを中心に多種多様な人々が行き交う場所ですよね。そんなエリアで写真を展示すれば、偶然とはいえ多くの人が写真にふれるチャンスが生まれます。写真はアートの中でも非常に民主的なカテゴリーですから、写真を見て何かを感じてくれる人がたくさんいるはずです。その結果、人々の心に変化が生まれ、人同士の新たなつながりやコミュニティへと発展していく可能性が大いにあると思いますね」(バージィレイさん)

 

昨年に引き続き、キュレーターとしてT3に参加しているマーク・フューステルさんも来場。フューステルさんは、パリを拠点にライター、エディター、キュレーターとして世界で活躍しています。今年は、企画展「Alternative Visions: A Female Perspective 女性の視点」(東京スクエアガーデン1F アートギャラリー、10月5日~27日)のキュレーションを手掛けています。世界におけるT3の重要性などについて熱く語ってくれました。

 

 

「東京という世界最大級の都市でT3という国際写真祭を開催することはとても重要です。世界中から写真家、キュレーター、ギャラリー経営者、アート愛好家が集まる素晴らしい機会ですからね。さらに今年を皮切りに、日本という枠を超えてアジア全体の写真文化の発展を目指すべく、韓国人のキム・ジョンウンさんをディレクターに迎えてアートフォトの展示や販売を支援する取り組みも始まりました。欧米の写真文化のあり方を意識するにとどまらず、アジア全体の写真文化を構築しようとするアプローチは非常に素晴らしいと思いますよ。日本ではアートとして写真を鑑賞・収集する文化の発展が欧米に比べて遅かったことは否めません。しかし、だからこそ、日本の人々はよりオープンに写真を楽しむ姿勢を持っているのではないでしょうか」(フューステルさん)

 

フューステルさんの言葉には、日本だけでなくアジア全体で発展していく写真文化への大きな期待が込められています。

 

■まちの中で気軽にアートと触れ合えることへ、多くのゲストから期待の声

 

会場内ではあちこちからT3についての感想や期待が、来場していたアーティストやインフルエンサーなど、ゲストの皆さんからも語られていました。

 

 

 

 

 

「まちでアート作品に触れられるイベントは、日本ではまだ少ないと思います。こういうイベントが日本でももっと増えてほしいです」(小源寺涼太さん)

 

「自分でもテーマを決めて写真を撮るようにしています。いろいろなインスピレーションを得たいので、アートや写真展にはよく足を運んでいます」(Atsuko Yamaguchiさん)

 

「写真って、ある瞬間を切り取ってずっと残せるのがいいですよね。時間が経つほどに、その一枚一枚が特別なものになっていくのが素敵だと思います」(Rikarinさん)

 

「街の中に写真が展示されるのは面白いです。通りすがりに突然写真を見たら、『何を思いながらこの写真を撮ったんだろう?逆に撮られた人はその時何を思っていたんだろう?』と想像がどんどん膨らんでいきそうですね」(Yuriさん)

 

「街のなかにアートがあることが、すごく現代っぽいと思います。わざわざギャラリーや美術館に行かなくてもアートを楽しめるなんて最高ですね」(EMILIAさん)

 

 

 

国内外から集まる数多くの人々が交差しながら、アートと観光を同時に楽しめる10月の東京。これまでにも増して充実するT3により、アジアの写真文化の中心地として、盛り上がっています。

 

T3の開幕に先立つこのレセプションは、作家やキュレーターの方々の言葉を通じて、日本そしてアジアの写真文化について思いを馳せる貴重な機会とにもなりました。

 

取材・文/冨永真奈美

撮影/島村 緑