EVENT REPORT

「リユース・リサイクル」の新たな循環の輪。「YNK Sustainable Party 」開催レポート

2024.10.16

当サイト内でも予告しました、“古着”をテーマにしたイベント「YNK Sustainable Party supported by TOKYO SQUARE GARDEN&SMASELL」が9月20日(金)・21日(土)の2日間、京橋駅直結の「東京スクエアガーデン」にて開催されました。

 

 

過剰在庫や大量廃棄などで、環境負荷の高さが問題視されてきたファッションですが、昨今、二次流通が世界的に活発化し、いわゆる“古着”の人気が再燃しています。今回のイベントでは、ファッション業界関係者の私物フリーマーケット(以下、フリマ)や古着だけのファッションショーなど、古着初心者でも楽しめるコンテンツで、来場者を巻き込むかたちで「リユース・リサイクル」の新たな循環の輪がスタートしました。

 

 

「YNK」と古着の切っても切れない(⁉)関係の始まり

 

当日の写真で、ステージと物販ブースの模様を振り返りながら、サステナブルなファッションの楽しみ方をみていく前に、イベントタイトルに付いた「YNK」と古着のつながりについてご紹介します。

 

 

東京スクエアガーデンのある京橋(K)と、隣り合う八重洲(Y)・日本橋(N)エリアは、もともと江戸城の城下町でした。国内の限りある資源のみで暮らしていた江戸時代、そこには自然と調和したサステナブルなコミュニティがあったそうです。

 

 

(以下、会場ポスターより抜粋)

当時の、ごみをごみにしない資源循環の代表が「着物」です。着物は古着屋から買うのが当たり前で、ほころびができたらあて布をしてできる限り長く着る。自分の手に負えなくなったら回収業の古着買いに売ったり、再生業の古着仕立屋に預けたり。対象にならないボロは、おむつや雑巾として使い切り、最後は火を焚く材料にして、残った灰さえも染料や肥料としました。

 

 

さらに、北紺屋町(八重洲2丁目・京橋3丁目)は染物の国役を務める人々の集住地だったということで、聞けばなるほど、「YNK」と古着の関係の始まりは、かなり前から存在していたのですね。

 

 

オフィス街に出現した、一夜限りのランウェイ

 

Sustainable Party1日目、金曜よる7時。オフィスビル足元の広場で突如始まったランウェイに、周辺のビルから退勤した会社員や外国人観光客らが足をとめ、闇夜に浮かぶように照らされた、古着ファッションに身を包んだモデルたちを写真におさめていました。

 

 

ステージでは、コーディネートを担当したスタイリストの福永いずみさんが、ランウェイルックについて、パッと目を引く着こなしのコツを解説。社会人になり、“オフィスコーデ”が増えたことで、古着から離れてしまった人も少なくないのでは? 今回の古着ファッションショーを通して、最低限のワードローブを揃え切った大人にこそ、遊びやスパイスのあるアイテムを、古着でプラスすることの醍醐味をもっと知って欲しい、そんなメッセージが伝わってきました。

 

 

 

新しい服を買う前に、古着という選択肢を

 

今回のイベントの出展コーナーは、物販、飲食、そしてリペア&リメイクの大きく3つに分かれます。最も広くスペースが割かれていたのは物販で、「ファッション業界関係者の私物フリマ」「KIDS&レディース古着の販売」「UPCYCLE Productsの販売」が行われました。

 

フリマには、華麗なランウェイを披露したモデルたちのほかに、モデルのヘアメイクを担当したヘアメイクアーティスト、終日にわたり会場を盛り上げたDJらが出品。実は、ファッションショーに付随して、出品された服やアクセサリーについて本人から紹介があったのですが、着ていた時のストーリーを知れただけに、お気に入りの一着が新しい持ち主と次のストーリーを紡いでゆく、その目に見えないつながりを、とてもあたたかく思いました。

 

 

ふと過去のことを思い出す瞬間、その時身につけていた服までも思い出されるように、服はウキウキワクワクした気持ちを与えてくれます。そういう意味で、どんな服も着られるのを待っています。

 

しかし、コロナ禍において衣料品の需要が急減し、縫製工場へのキャンセルが相次ぎました。中でも、衣料品の輸出大国のバングラデシュの工場では、輸出オーダーの9億5200万ピースがキャンセルに。こうした状況を受け、今回のイベントの主催の1社でもあるウィファブリックが、パリコレ等で活躍するブランド「ヨシオクボ(yoshiokubo)」とタッグを組み、バングラデシュの工場に残った商品をアップサイクルし、販売するプロジェクトを始動。今回のイベントでも、取り扱われました。

 

 

 

 

リメイクで、ファッション業界をサステナブルに

 

会場でひときわ目を引いたのは「ReSew×文化服装学院によるリペア・リメイク」のコーナー。ずらりと並んだマネキンは一様に、不要になった衣服や古着を解体してパターンから作り上げるリメイク品を纏い、「一点もの」という価値を有しています。一点一点がなんとユニークなこと!

 

 

自由なクリエイションを存分に発揮した作り手は、明日のファッション業界を担う文化服装学院の学生たち。サステナビリティに対する意識が高いといわれる若い世代の存在は、ファッションをもっとサステナブルに楽しむために、頼もしい以外の何者でもありませんね。

 

また、洋服の修理をはじめ、リメイクやカスタムを通じて環境問題にも取り組む修理工房「ReSew(リソウ)」は、その高い技術力と仕上げの美しさで依頼が絶えない工房。とはいえ、こういう機会でもなければ、いざ手持ちの服を生まれ変わらせたいと思っても、どんなサービスがあるのか分からなかったり、ある程度分かっていないとうまく質問できなかったりするので、今回のようなイベントの中で、職人さんと気軽に話せるのは有難い機会でした。そして、自分と時間を共にしてきた服がどのように生まれ変わるのか、待つ楽しみもあるのもポイントです。

 

 

 

サステナブルという言葉と、物を大切にしようとする理念

 

Sustainable Party2日目、幼少時代からモデルとして、今ではラジオパーソナリティや俳優としてマルチに活躍中の浦浜アリサさんがトークショーのステージに登場。好奇心のままによく話し、よく笑うアリサさん。ステージには終始、ポジティブなムードが漂い、1時間があっという間に感じるトークショーでした。

 

 

今回のイベントのテーマである “サステナブルな選択”はもしかしたら、何か我慢を強いられるようなイメージをもつような人もいるかもしれません。けれど、アリサさんの話を聞いていて、ごく単純なことだと分かりました。それは、好きなものやお気に入りを大切にすることだったり、そのブランドのサステナブルな活動を応援することだったり、根底にあるのは“愛” なんだと感じました。

 

アリサさんが当日、身に着けていたシルバーのリングはお母さまから譲り受けたジュエリーで、20数年も愛用し続けているそう。身に着けている物が会話のきっかけになり、持ち主の人柄や服への愛し方への共感が生まれます。そして、「そういえば、あんなものもあったな」と、クローゼットで眠っている服の存在とともに、着ていたときの風景や自分の想いがよみがえる。服への思いを伝えたり高めたりできる今回のイベントはまさに、冒頭に書いた“新たな循環の輪のスタート”といえるのではないでしょうか。

 

 

お酒と音楽に酔いしれながら、オシャレに楽しくサステナブルに

 

会場には、地球環境や人々の健康に配慮した原材料で作られたフードやドリンクも集められていました。管理栄養士監修のand/orのグラノーラ、千葉県産落花生のみを使用したピーナッツバター’HAPPY NUTS DAY’のほか、スペシャルティコーヒーの GOOD COFFEE FARMS Cafe & Bar (日本橋3丁目)がコーヒーの果皮から造ったアップサイクルIPAやPatagonia IPAなどを提供。

 

 

GOOD COFFEE FARMS Inc.は、持続可能で再生可能なコーヒー農業に取り組む、Farm to Cupを実現するコーヒーの会社です。Farm To Cupを実現するアイコンになっているのが、同社が開発した自転車式の脱穀機で、従来、コーヒーの精製には大規模施設が必要でしたが、これを使えば農家は自ら脱穀が行えるようになります。また、自転車なので、水や燃料、電気が一切かからず、環境負荷も抑えたサステナブルなプロセスになっている点も注目です。

 

古着の持つストーリーや、服に限らず、作り手と伝え手の想いに触れると、物を所有することや消費することの責任を感じることができます。そのことが、私を強くしてくれるように思えた2日間。開放感がある野外で、丁寧に服を吟味している人、ドリンク片手に会話に花を咲かせている人など、思い思いに楽しむ人たちの姿がみられました。これからは「買い物」に対して、より愛と理念を持ちたいですね。

 

 

 

 

YNK Sustainable Party supported by TOKYO SQUARE GARDEN&SMASELL 

会場:東京スクエアガーデン 1階貫通通路(東京都中央区京橋3-1-1)
開催日時:2024年9月20日(金)16:00~21:00、9月21日(土)13:00~18:00
料金:無料
主催:株式会社ウィファブリック、東京建物株式会社
後援:京橋三丁目町会
協力:SMASELL Sustainable Commune、株式会社TSIホールディングス(ReSew)、株式会社MORIパーソネル・クリエイツ(文化服装学院)
特別協賛:東京スクエアガーデン

東京スクエアガーデン 公式サイトはこちら