EVENT REPORT
八重洲・日本橋で「TOKYO BLOCKS PARK!」開催。路地が華やかな外飲みスペースに様変わり
2025.11.26
東京駅前の一大ビジネス街で、高層のオフィスビルが多く建ち並ぶまちというイメージが強い八重洲・日本橋エリア。実は昔ながらの趣のある路地が、今でも多く残っています。そんな路地空間で10月22日から11月1日まで開催されていたのが「TOKYO BLOCKS PARK!」。
昔ながらの路地に、夕方からデジタルアートによる装飾や移動式の屋台が登場。期間中は連日、周辺で働く仕事帰りのワーカーや地元の人々が足を止め、気軽にお酒や料理を楽しみながら語らう姿が見られました。
もっと路地の魅力に気付いてほしい! 「地域活性化」と「路地利活用」の第一歩
多くの車や人が行き交う通りから普段は静かな路地をのぞくと、そこにはデジタルアートによる光の装飾と、ビール片手に料理をつまみながら語らう楽しそうな人たちの姿が。
イベントが行われたのは、八重洲・日本橋エリアにある3つの路地。いつもとは違う賑やかな空間が広がり、その雰囲気に引き寄せられるように、次から次へと仕事帰りのワーカーが訪れていました。

TOKYO BLOCKS PARK!実行委員会でこのイベントに企画から携わった東京建物株式会社まちづくり推進部の川島あさひさんは「このエリアは最先端のビジネス街と江戸時代から続く豊かな歴史・文化が共存する場所。それが他にはないこのエリアの特徴であり魅力」と語ります。
「大通りから一歩入ると、老舗の飲食店や赤ちょうちんなどが立ち並び、古き良き日本の風情を残した路地空間が広がっています。このような魅力を生かして、路地やまち全体を盛り上げていきたいという地元のみなさんの強い思いがありました。創業から八重洲に本社を構え、このまちの魅力や価値向上に取り組んできた当社も同じ思い。そこで、このまちの一員として、地元の方々と一緒に、路地を活用しつつ、まち全体の賑わい向上に繋げたいと思い、今回のイベントを企画しました」(川島さん)
一方で、路上喫煙者の滞留によって通行がしにくい、はじめてこのまちを訪れる人は路地に入りづらい等の課題もあったそう。そこで、このようなまちの課題解決を図りつつ、このエリアの魅力であり資産でもある路地を生かして、エリア全体の魅力アップに繋げることを目指し、「路地利活用」の取り組みがスタート。その第一歩として今回のイベントは開催されました。
明るくおしゃれな路地で、ドリンク片手に地元飲食店の料理を楽しむ
今回、イベントの会場となったのは八重洲・日本橋エリアにある3つの路地。
東京駅からもっとも近くに位置しているのが、「東京建物八重洲さくら通りビル横路地」。外堀通りから路地をのぞくと、いつもは暗く静かな路地が温かな光でライトアップされていました。インタラクティブなデジタルアートも設置されていて、華やかな雰囲気。

廃材をアップサイクルして制作した「旅する屋台」では、この路地沿いの飲食店のメニューをテイクアウトで販売。訪れた人々は、日本橋兜町の「BALDYS GOOD BEER」で醸造されているお酒を片手に、台湾ソーセージ、ジャンボ焼餃子(DRAGON BORACCHO/ TaiKouRou TOKYO本店)、鰻の煮凝り(鰻 はし本)、カレー牛もつ煮込み(炭焼 てらまえ)などを味わっていました。立ち飲みタイプのテーブルが設置されていて、サクッと飲み食べしたいときにぴったりの雰囲気。

八重洲さくら通り沿いにある「GOOD COFFE FARMS」脇の路地に設けられたのが「SAKURA POCKET PARK」。「GOOD COFFE FARMS」の窓カウンターから商品の注文と受け取りができ、路地にはテーブルも設置されていました。

ドリンクはビールのほか、ナチュラルワイン、ノンアルコールドリンクなど充実のラインナップ。フードは、オリーブなどの軽めのおつまみからブリトーやグリルチキン&ナチョスチップスなどのがっつり系メニューも。ドリンクも料理もしっかり楽しみたい時に最適の空間でした。


もう一か所が、東京建物八重洲ビル横の「YAENAKA POCKET PARK」。こちらにはキッチンカーが出店していて、そこで購入した料理をソファ席で味わうことができるようになっていました。本イベントを機に、路上喫煙対策として設置していたカラーコーンを撤去、代わりに足元にソーラー式行燈の「Sonnenglas®︎ EN」を配置し、景観美化を図りつつ、夜間でもより安心に通行できる環境に。さらに屋外に設置されたソファでゆったりとくつろぐことができ、快適な空間となっていました。

2つのキッチンカーでは、隣接する「割烹 嶋村」の豚汁と、Innovative Kitchen「8go(エゴ)」のアオサ香る柚子団子汁や「8goチキ」などを販売。その場で食べるのはもちろん、テイクアウトでオフィスに持ち帰っていく近隣のワーカーの姿も目立ちました。

3か所ともそれぞれ違った雰囲気とメニューが楽しめるため、路地をはしごする人の姿も。訪れていた方にイベントの感想を聞いてみました。
「同僚と少しだけ飲んで帰るのにちょうどいいです。期間中にまた来たい」
「地元のお店を知るきっかけになりました。今度ランチにも行ってみようと思います」
「ぜひ定期的にやってほしい。次は暖かい季節にもやってもらえるとうれしいです」
「普段より明るくなっていていいですね。灯りがあって賑わいを感じるので、女性1人でも立ち寄りやすかったです」
「普段はただ通過する場所だった路地が、これを機に『目的地』に変わりました」
「一歩路地に入ると新たな発見がありました。おしゃれ穴場感があって素敵です」

写真提供:TOKYO BLOCKS PARK!実行委員会
開催期間中、訪れた方の声を聞いてプロのイラストレーターがイラストとして記録してくれるグラフィックレコーディングを実施。「入りやすいお店を見つけた!」「偶然の出会いがあった」「灯りがあって賑わいを感じます」など、肯定的な声が多く集まりました。
このイベントをきっかけに、さらに地域との取り組みを強化
今回が初めての開催でしたが、多くのワーカーが足を運び、いつもとはひと味違う路地空間を体験できたと好評のうちにイベントは終了。さらに、地元のみなさんからも好意的な反応をいただいたとのことです。

「このイベントは、企画段階から路地の活用について地元のみなさまと何度も協議を重ねながら進めてきました。地元の方々のまちへの愛着や誇り、想いは強く、そういった想いを大切にしながら形にしていきました。
地元のみなさまから、今回やってみてよかったという声をいただいています。特に暗かった路地が明るくなったことやそれに伴い路上喫煙者が大幅に減ったことを良い点として挙げる声が多く、東京建物八重洲さくら通りビル横路地に設置した照明などは常設化する予定です。今回の取り組みをしっかりと振り返り、地元のみなさまやイベント参加者からいただいた貴重な気付き・アイデアを基に、地元の方々と意見を出し合いながら今後の施策検討に生かしていこうと思います。将来的には、路地、そしてまち全体が今以上に賑わい、歩いて楽しいまちになっていたら良いなと思います。」(川島さん)
このイベントが行われた10月下旬は、屋外で過ごすのにちょうどいい時期でした。普段忙しい八重洲・日本橋で働くワーカーの皆さんにも、外飲みの気持ちよさを感じてもらえたのではないでしょうか。
取材・文/石橋夏江(verb)
撮影/島村 緑