Vol.5 戸田建設

2016.09.24

118年の歴史を刻んだ京橋で、芸術文化が花開く新たな空間を創造。

早稲田大学の大隈講堂や神田の学士会館、目黒の旧朝香宮邸、横浜の税関庁舎など、昭和の名建築の数々を手がけてきた戸田建設が、京橋の地に拠点を定めたのは、今から118年前にさかのぼる。

 

京都に生まれ、宮大工の修業を積んだ創業者の初代戸田利兵衛は、明治14(1881)年に上京。赤坂で「戸田方」として建築請負業を開始した。一時東京を離れるが、31(1898)年に再上京して事務所兼住居を構えたのが、現本社ビルのすぐそばの京橋区大鋸町だ。

 

その10年後には「戸田組」となり、現本社ビルのある京橋一丁目に昭和4(1929)年、本店を竣工。この頃から横浜や大阪、名古屋などに出張所を開設して、全国規模の総合建設業者に成長を遂げ、昭和11(1936)年に「株式会社戸田組」となった。

  • 現社屋がある京橋1丁目の一角に1929(昭和4)年竣工した戸田組本店。モダンな洋風建築で、設計・施工ともに戸田組が行った

  • 9階建ての現本社ビル。2019年に解体予定で、手前にあった永坂産業のビルはすでに解体が終了している

昭和31(1956)年に新設された土木部は、都営地下鉄や首都高速など高度成長期の大型工事を数多く手がけた。36(1961)年には現本社ビルの旧館、5年後の41年に新館が竣工。その間の38年には、戸田組から現社名に変更された。

 

そして今、戸田建設は新たな歴史を刻もうとしている。それが京橋一丁目東地区で、今年からスタートする開発計画だ。戸田建設本社ビルと隣接する永坂産業京橋ビルの建て替えに伴い、街区全体の開発を行う。
めざすのは、東京駅周辺に「まちに開かれた芸術と文化の拠点」をつくること。この開発街区には美術館のほか、若手芸術家の創作支援施設などを整備する。戸田建設の本社ビル前には、文化芸術に関するイベントやさまざまな地域活動の舞台となる広場空間「アートスクエア(仮称)」を設ける予定だ。

 

2019年度に永坂産業が、2023年度に戸田建設が建物を完成させる予定。芸術と文化の拠点として、新たに生まれ変わる京橋一丁目東地区に注目したい。

  • 2023年度に完成予定の京橋一丁目東地区開発イメージ図。右が地上28階となる戸田建設の新本社ビル。左は永坂産業京橋ビル

  • 江戸三大祭の一つで毎年6月に開催される山王祭。2年に1度の例大祭では京橋一丁目町会で神輿を出し、戸田建設の社員有志も担ぎ手として参加するのが恒例。毎回、のべ100名ほどが参加している

戸田建設株式会社
住所: 中央区京橋1-7-1
TEL: 03-3535-1354
交通: JR東京駅から5分、東京メトロ銀座線京橋駅(6番出口)から2分
WEBサイト: http://www.toda.co.jp

 

TEXT: 井上りえ
東京人2016年7月増刊より転載